二夜に渡りNHKスペシャルで「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~(前後編)」が放映されました。猪瀬直樹のロングセラー「昭和16年夏の敗戦」を原案に作られたドラマです。ドラマですが実際に行われたことを忠実に再現した作品でしたから大変見応えが有りました。「戦争は良くないのに何故回避出来なかったんだ」という正論を語る人々がいます。戦争後半の崩れ落ちるように直面した連戦連敗に駄目押しの広島•長崎の原子爆弾に直面した日本人は「二度と戦争を行ってはいけない」と痛感し80年が経過しました。しかし当時の日本国内世論の大半は列強諸国の言いなりになることを良しとせず「突き進むべし」という風潮でA級戦犯の東條英機陸軍大将でさえも、その歯車を止めることは不可能だったことがドラマ内に描かれていました。戦後になって「多くの国民が亡くなられたのに」「悲惨な戦争だったのに」「現在でも米国との国力差は歴然なのに」と「何故戦争を回避出来なかったのか」と戦争回避論が圧倒していますが是非一度原作を読むかドラマを見て欲しいのです。そして考えて欲しいのです「当時アナタが生きていたら」と。ある映画作品の中で「日本は負けなくてはいけない。負けて負けて徹底的に負けて目を覚まし再生しなければいけない」というセリフが有りました。その時は気にせず流していたのに今回ドラマを見ていて急にセリフが鮮明に蘇り「そういうことだったんだ」と合点が行きました。『シュミレーション』の内容は、各分野の最高と思われる専門家が集められ「昭和16年時点に米国と戦ったらどうなるのか?」というシュミレーションを行うという作品です。南方の食料支援の断念、ドイツの敗北、日本本土空襲、ソ連の参戦等々が全て「ほぼ」的中する正確さで彼らの結論は「断固米国との戦争は回避すべし」という16年の時点で既に完敗結果でした。驚くことに全て正確な結果で報告書に記載されていなかったのは広島と長崎の原子爆弾投下のみでした。それほど迄に悲惨な戦争、無謀な戦争と結論付けたのに何故回避出来なかったのか?見応えのある作品だったと感じたと共に「これが事実だった」「日本人の能力の高さ」に驚きましたのは連合軍も同じだったようです。東京裁判では予想展開の一致さから予想資料が「作戦会議」「作戦資料」と勘違いされシュミレーション参加者は戦犯になる危険性が有ったほどでした。見終わって「もう二度と戦争をしないように」という思いは勿論ですが結果を知っているから言えること、その状況に置かれたら?軍上層部の思惑が垣間見れ悶々とした思いが少し晴れた気がしました。